こんにちは。パブリッシング担当のnabeです。
備忘録も兼ねて、今後Steamで成人向けゲームをリリースしたい開発者さんが、なるべく審査で困惑しないように記事を書きたいと思います。一部の方は既にご存知かもしれませんが、Steamでの審査は、ほんの少しの違いで結果が大きく異なってしまいます。
Steamでアダルトゲームを販売することは可能
2018年頃から、Steamではストアページ内に「成人向け」フィルタが登場しました。
それに関連して、複数の成人向けタイトルが審査通過を報告し始めたのがきっかけとなり、これまでの「通常版+外部R18パッチ」といったある種、ルールの穴を突いたようなリリース形態から一定の基準をクリアすればSteamでもエロ有の製品版ゲームを販売できるようになったと、開発者の間で認識が広まりました。
私たちのサークルも、この認識があったからこそ、ゲームをSteamでリリースするに至ったという経緯があります(なお実際は丁重にリジェクトされた模様)。
Steamで販売できるアダルトゲームの基準
Steamworksの開発者向けドキュメントには、以下のような基準が記載されています。
成人向けコンテンツを含むゲームがSteamで適正かどうかを判断する基準について理解しやすいように、ゲームの配信を拒否する一般的な理由を説明します。これらの点は、コンテンツの今後の受け入れに際して適宜内容が見直されるため、順守していればコンテンツの受け入れが保証されるということではありません。
あなたの成人向けコンテンツの物語や設定で、キャラクターが未成年であることを示唆している場合、そのゲームは配信されません。9000才の高校生ヴァンパイアや、大人に見える高校生などで回避することはできません。
また、説明がない場合や年齢が明確でない場合は特に、成人向けコンテンツのキャラクターが視覚的にどのように描写されるかにも着目します。合理的に判断して、キャラクターが未成年と見なされる場合は、そのゲームは配信しません。
未成年が関与する性的テーマが暗に含まれる場合、そのゲームを配信するかどうかは、取り巻くコンテキストによって判断します。
年齢確認が必要な視覚的描写を含むアダルトコンテンツは公開しません。詳細については、[18 U.S. Code § 2257]などを参照してください。リンクはこちらです。
ゲームビルドにアップロードされているすべての成人向けコンテンツは、ゲーム内でのアクセスや表示がない場合でも、開示する必要があります。
21年8月現在から引用
制作に際して確認のためサポートに問い合わせましたが、「ドキュメントの基準をクリアしていればどんな内容を含んでいようが構わないよ」という説明を受けました。ホントのところはどうなのかわかりませんが…。
ストアレビューとビルド審査の注意点
ここからは実際にやってみて分かった注意点をご紹介します。
とりわけ、「成人向けアンケート」は超重要です。
必ず明記すべき内容は、以下の3項です。
- このゲームの登場人物は全員18歳以上です
- このゲームには、性行為が含まれます(含まれません)
- このゲームには、女性の裸体が含まれます(含まれません)
この3つは鉄則で、もはやテンプレ―トと言っても過言ではありませんので、必ず記載するようにしましょう。ゲームが他言語に対応している場合は、全言語でそれぞれ説明を書いてください。これはストアページのローカライズと同じで、一つの言語でも説明が欠けていたら効力を有しません。
Steamのルールでは、これらの記載がない場合は、登場人物の年齢はキャラクターの外見で判断されます。つまり、審査員がイラストやCGを見て、そのキャラクターが未成年だと思ってしまったらアウトということです。しかし、上記のような判断材料があると、ある程度は考慮され、こちら側が有利になることがあります。
審査のチャンスはたった一度きり
最初の審査結果は、以下のような感じでした。
説明には具体的な指摘が無いため原因を推察するしかありませんが、駄目だった理由は恐らく、「登場人物は全員18歳以上」という文言を書いていなかったたためだと思われます(他の2つは記載していました)
また、この時点で一切の修正が行えず、所謂BANと同等の処置を食らいました。(流石に一発アウトは酷くないですかね…)
諦めきれず再度、アンケート内容を変えて提出してみましたが
このように門前払いされました。
つまり、「成人向け」ジャンルの審査に一度でも落ちてしまうと、再審査が出来なくなります。
同じタイトル、同じ内容のゲームはもちろん、内容のチェック以前に弾かれてしまうので、結局CGを修正しても無駄ということになります。
場合によっては提出費用 (100$) の返金が大変
BANされてしまったら、ゲームの提出費用はどうなるのでしょうか。
当然、向こうから返金はしてくれませんので、こちらからサポートに問い合わせ返金してもらう必要があります。これも担当者によって対応がマチマチですので、OKが出るまで粘りましょう。レスポンスが遅い場合は、チケットを解決済みにして新しいチケットを発行すると、別の担当者に当たるので活用してみてください。
私も何度かサポートに問い合わせを行い、なんとか提出費用の$100を返金してもらいましたが「別のゲームの審査のために使いたいから返して欲しい」 といった説明を行うと比較的やり取りがスムーズでした。
Steamでアダルトゲームを販売出来るかは運次第
一連の流れを経験した上で、恐らくストア審査は問題ないでしょう。しかし、ビルド審査の担当者で全てが決まります。
なお、登場人物の年齢を明記したからと言って、ゲームが必ずリリースされるとは限りません。すべてはSteam側のさじ加減です。海外では既に、これに関連した抗議が行われており、問題が表面化していることからも、Steamという名のプラットフォームで「成人向け」というジャンルは一筋縄ではいかないということがお判りいただけるかと思います。
「違法でなければなんでもOK」になったはずのSteamで結局エロゲーはどうなったのか?(GIGAZINE)
https://gigazine.net/news/20190910-steam-censoring-adult-games/
このように、「Steamでの販売を狙ったエロゲー開発」はかなりのリスクを孕んでいるため、「ついでにSteamでも販売できればいいや」程度で考えた方が、無駄に精神を消耗しなくて済むと思うのです。
おしまい
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